『雨上がり』


 
 雲の切れ間から、きらきらと日差しが落ちてくる。
 仔犬の眼をした長崎屋の若手代・佐助が、しっかりと一太郎坊ちゃんの手を握り、幸せそうに空を見上げる。それを幾分まぶしげに見た仁吉の口元にも笑みが浮かぶ。

「雨があがったね!」

と、はしゃいだ一太郎の声に、傍らの仔犬が笑みをこぼす。
 


 ようやく元気になり、きちんと薬を飲んだご褒美にと、兄やたち同伴での他出。久方ぶりの楽しい時間、さて家に帰ろうとの帰り道、突然暗い雲がわいて雨が降り出した。
 雨宿りの間の一太郎、暗い顔で恨めしげに、暗い空を見上げていた。けれど通り雨がさっと過ぎた途端にこの笑顔。
ここの所ふさいだ顔をしていたのは、佐助兄やも同じこと。今は、笑う一太郎をひどく幸せそうに見つめている。
 一太郎に引っ張られ、軽くたたらを踏んだ佐助の手に指を絡める。小さく振り向いた佐助の唇をかすめるようにして奪い、仁吉が口の端を引き上げて笑う。往来での一瞬の出来事に、おぼこい仔犬は一気に赤面して動きを止めた。言葉をなくして、口をパクパクする佐助に、仁吉がにっこり微笑みかける。

「何してんだい、早く帰るよ」

 名残惜しいが、絡めた指を解こうとした刹那、きゅうと強く握ったのは佐助のほう。上目遣いに仁吉を見て、艶めく笑みを投げかける。

「そんなに早く帰って、何をする気だい?」

 妖だけに聞こえる小さな小さな呟きが、仁吉の耳に滑り込む。寸の間、動きを止めた仁吉へ、してやったりと笑みを投げ、佐助がさっと身を翻す。
 
 何事もなかったように一太郎と手をつなぐ。数歩行って振り返り、「帰るよ!」と仁吉へ明るい声を投げてきた。
 
 どうもおぼこい仔犬のほうが、さりげに上手のようで。



 

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誕生日と言う事で頂いてしまいました…(ガクブル)
いいのか…貰いすぎだろう自分…。
でも一度貰ったものは何があっても離しません!!!!(は?)

もうこのカマされたと見せ掛けて逆にカマす佐助が堪りません!!!!!
ザマミロ仁吉!!!!(ぇー)

いやはや…ホンマありがとうございました…(土下座)