何度目が分からない寝返り。
暗闇に浮かぶ枕元の時を刻む文字盤に、視線をやるのも、何度目か分からない。
窓の外の雨音が、耳を塞ぐ。
隣のシゲの寝息すらかき消すようなそれが、ひどくうるさいと、水野は眠れない意識で、思う。
暗闇に視界を塞がれて。
雨音に耳を塞がれてしまっては、一人なのか二人なのかも分からない。
まるで雨に隔離されているみたいではないか。
「寝れへんの?」
不意に、響いた雨音以外の音に、何故だかひどく驚いてしまった。
一拍遅れて、抱くのは、起こしてしまったという罪悪感。
「悪い。起こしたな」
「かまへんよ」
けれど、暗闇に生まれた会話は、雨の檻から水野を掬い上げる。
柔らかい西の言葉が、雨音を払う。
軽く、ベッドが軋んで、自分を覆うケットがずれたことから、シゲが起き上がったのが分かった。
暗闇の中、微かに笑う気配が、空気を揺らす。
「ティー抜きのミルクティーいれたろか?」
暗闇に視界を塞がれているはずなのに。
シゲの指先が、迷うことなく水野の髪に触れる。
それはひどく、心地よかった。
「いらねぇよ。…けど…」
「うん?」
また、ベッドが軋む。
軽く引っ張られるケットに、近くなった体温。
隣に横になったシゲの吐息を、今度こそはっきりと、水野の耳は捉えた。
その指はまだ、水野の髪を梳いていて。
やはり、それは心地よかった。
「もう少しこのままが良い」
一瞬、シゲが目を見開くのが、気配で分かる。
「えぇよ」
柔らかな笑みを含んだ声と共に、シゲの腕が首筋に絡む。
そんなことまで頼んでないと思ったけれど。
やはり、それはひどく心地よかったから、拒めなかった。
「よぉお休み」
いつの間にか、まるで引き込まれるように。
水野の意識は、暖かな眠りに、落ちていた―。