花言葉は固い絆
ある日長崎屋の庭にぽつりと朝顔が咲いた。
流行りの品種交配を重ねたものではない。陽が昇るとともに、原種の薄い青色の花びらを開かせる。
野放図に伸びる緑に合わせて庭へといつの間にか入り込んだようで、伸びた蔓は渦をまいて蔓延り、若旦那の気づくまもなく花開かせていた。
日差しは明るいが湿度はなく、からり天気で青空に高々と昇る入道雲の白が眩しい。病がちな若旦那も珍しく気分がよくて、兄やたちの許しをえて縁側に腰を下ろしていた。盆の上には二つの器。一つは余りではなく待ち人を労うためである。
庭先の花を眺めていた若旦那の瞳に喜色が滲む。待ち人が現れたからだ。
首にかけた手拭いで汗を拭いながら、長崎屋の庭に現れた松之助の頬は日中の日差しを受けてか、ほんのり赤く火照っている。
一太郎の笑顔に気付くと、眦を緩めはにかむように微笑み返した。
縁側までやってきた処で器を差し出すと、差し出された手の内を眺めてほんの僅かに首を傾げてみせる。
「ひやしあめだよ。兄さんと一緒に飲みたいな、と思って…」
「あたしには勿体ないよ。」
遠慮がちに首を振る仕草と、少し焼けた健康的な肌が眩しくて若旦那は眸をすがめた。
嗚呼、脳裏に薄い青の朝顔が浮かぶ。
「朝顔って兄さんのようだね。」
「なら若旦那は長崎屋のみんなの太陽ですね。」
「みんなの…なのかい?」
「ええ」
「みんなの…?」
兄さんのじゃなくてーーーと眼差しで訴えれば、眼差しに堪えきれずに俯いた松之助が耳を真朱に染め上げて、喉に張り付いた声を絞り出した。
「あ、あたしの太陽です。」
掠れたひどく小さい声が愛しい。両膝の上で握り締めた松之助の拳が震えていた。
一太郎は傍らのすこし大きい兄の体を抱きしめると、背中に顔を寄せて微笑んだ。
太陽が無ければ朝顔は咲けないものだから。
「やっと言ったね。」
微笑んだ一太郎の唇は、わずかに艶を含んで、その表情の中に手代に似た影をみる。誰に似たのかねと屏風の中の付喪神が密かに失笑を零したことを、今はまだ誰も知らなかった。
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フリーということで遠慮無しに頂いてしまいました><
い ち ま つ ! ! !
余所様の一松ですよ貴方!!!
とってもとっても貴重ですよ(ノд`)
やだもう真っ赤になる兄さんが可愛すぎて禿げました(*´д`)
どこぞの兄やさん譲りの微笑を浮かべる一太郎さんも素敵です(*´д`)
朝顔って!!!
確かに涼やかな夏の朝に凛と咲く、清い感じが兄さんを思わせますよね!!
素敵!!><
みーこさまが運営される素敵サイト大和路では、素敵過ぎる屏風受け作品が拝めますよ!!
皆様是非!!