さわさわさわさわ。
 おおきなおおきな笹が、お遊戯室の真ん中に、飾られます。
 佐助先生がどっからともなく、取ってきたらしいです。
 どこからかな?内緒です。

「へたくそ」
「……っうるさい!」

 みんなで、のりやはさみを使って、飾り付けや、お願い事の短冊を作ります。
 仁吉くんはさっそく、屏風くんにいちゃもんをつけてます。
 屏風くん涙目です。弱虫さんですね。

「一太郎はお願いごと、何にする?」

 マジック片手に、松之助くんが一太郎くんに尋ねます。
 一太郎くんはまだ字が書けないので、松之助くんが代わりに書いてあげるのです。

「兄たんのお嫁たんになれますように!」
「えぇ?……うぅん…わかった」

 何だか変だな?と思いつつ、松之助くんは短冊に一太郎くんのお願い事を書いてあげます。
 何故だか苦笑いの佐助先生に、笹のてっぺんに吊して貰うと、一太郎くんは嬉しそうに、松之助くんとおててを繋ぎました。

「おっきくなったら、けっこんしようね」
「うん、いいよ」

 けっこんは、だいすきな人とずっといっしょにいますよって約束することです。
 そう、守狐先生が言っていました。
 嬉しそうに笑う一太郎くんに、ちょっぴり恥ずかしいけど、松之助くんも一太郎くんと、ずっといっしょにいたいので二人はゆびきりげんまんをしました。

「これ、あげる」
「なあに?」

 松之助くんの指にはめられたのは、折り紙で作ったゆびわです。
 セロテープがちょっぴりちくちくします。

「こんにゃくゆびわ」
「こんにゃくゆびわ?」

 なんだかへんてこな名前です。
 でも、一太郎くんはおおまじめに「なくさないでね」と言うので、松之助くんもつられて、おおまじめにうなずきました。

「さぁみんな、おやつだよ」

 守狐先生が教室から呼んでいます。
 松之助くんはちゃんと、一太郎くんと手をつないであげて、教室に急ぎます。
 その、左手のくすりゆびには、空色の折り紙で作ったゆびわが、セロハンテープできらきら光っていました。