ふうわり。ふうわり。
ひどく優しい仕草で、髪を梳いてくる手は、確かに心地良いのだけれど。
少ぉし、物足りない。
「こら…」
頬を滑る手を捉えて、細く白い指先を、口に含む。
窘める様な声音は聞こえないふり。
深く、根元までくわえ込んで。
柔らかな指の腹から丁寧に。
思わせぶりに、舌を這わせて。
態と、水音を立てて、唇を離す。
艶やかに濡れた唇に浮かべるのは、誘う様な微笑。
見つめた先、守狐の眼に浮かぶ苦笑い。
「どこで覚えて来たんだか…」
呆れたような声音とは裏腹に、その腕は応える様に、屏風のぞきの腰を引き寄せる。
その言葉に、満足げに反らした白い喉を震わせて、屏風のぞきが、笑う。
「寝所の妖だもの…」
差し出すように反らされた喉に舌を這わせながら。
守狐が、笑った。
「よかった。…誰ぞの褥で覚えてきたなんて言われたら…」
「――――っ」
微かに、歯を立てられ、一瞬、息を詰める。
守狐の肩を掴む手に、力が籠もった。
「そいつを焼き殺すとこだったよ」
思わず、目を見開けば、ぶつかるのは愛しげな視線。
「…恐ろしい事お言いでないよ…」
軽く、鼻先で笑ってみたつもりだけれど。
言葉尻が震えたのは、掛かる吐息の所為か、それとも言葉の所為か。
恐らくはその両方だろうと、熱くなる目元を持て余しながら、屏風のぞきは思った。