―あやとり―


 掬って、開いて。
 まるで編むように、手指に絡ませる、紅い細紐。

「あれ?」
 
 けれどそれは、すぐに絡み、無残に崩れて、訳が分からなくなってしまう。

「ああ、ほら、ここを通してやるんだよ」

 不意に伸びてきた細く白い指が、屏風のぞきの手指を結ぶ、紅を掬う。
 
「ほうら、ね?」

 引いて、掬って。
 屏風のぞきの手指から、紅は簡単に解け、守狐の手指に、移る。
 白い手指が、紅を編んで。
 今度は綺麗に、幾何学模様を、その両の手指の間に、作り出す。

「…何でもこなすねぇ」

 感心した様に零せば、守狐の唇が、微かに、笑みを刻む。

「解いてみなよ」
「どれ…」

 手指の間を覗き込んで。
 そこを通して、そこを引いてと、守狐の言葉の通り、紅に指を通して行く。

「できたっ」

 両の手指の間に、紅い幾何学模様を広げて。
 得意げに笑う憑喪神に、守狐も、笑った。

「これでおたえの相手も出来るね」

 守狐の言葉に、思い出すのは、嬉しそうに細紐を手繰る幼子。
 その、笑顔を思い描いて。
 二人の顔に、同じ色の笑みが、広がった。