いつの間にか、二人、過ごすことの多くなった蔵の奥座敷。
 まあるい窓が作る、まあるい陽だまりの中。
 ころり、寝そべる。

「お前を探して、あの子は手に火傷を負ったらしいよ」

 困ったように笑いながら、ゆうらり、尾を揺らす。
 身に馴染みきったしぐさで、いつもの場所。
 傍らを振り仰ぐ。

「なんてこったい。無茶をするんじゃあないよ。あたしが兄やさん方に叱られちまう」

 そう、叫ぶ愛しい者の声が、聞こえた気がした。
 
「おやすみ。屏風のぞき」

 いつの間にか、二人、過ごすことの多くなった蔵の奥座敷。
 まあるい窓が作る、まあるい陽だまりの中。
 白く眩しいばかりの、空っぽの傍らに。
 守狐はひどく優しく、囁いた。

 

 必ずまた逢えるから。