軋んだのは、梁か、縄か、肌か。
その全部だろうかと、どこか冷めた頭の片隅で考える。
体全部の重みが、腰の縄に掛かり、痛い。
縛り上げられた挙げ句に吊された所為で、後ろ手の感覚はとうに消えていた。
嗚呼畜生。
胸の縄が苦しいったら無い。
「………っ」
髪を引き掴まれて、無理な角度で顔を上げさせられ喉が震えた。
目の前の無駄に綺麗な顔が、笑う。 嗚呼全く愉しそうだね。
「どうだい。少しは懲りたかい?」
優しすぎる声音が神経を逆撫でる。
散々打たれた頬が熱い。
一つ、息を吸って。
薄暗い蔵の土間に吐き棄てた唾液は、妙に紅い。
「随分、…あたし、に…ご執心じゃあないかい…え?白沢さんよ…」
細かい息の下。
精一杯の意地で口角を吊り上げて笑えば、一瞬、切れ長の目が驚いた様に見開かれて、少し、溜飲が下がる。
「………い…っ」
空を切る鋭い音の直後、肌に走る鋭い熱。
乱れ、剥き出しになった腿に一筋、紅い線が浮かぶ。
浮いた爪先が、空を掻いた。
「そうだねぇ…」
篠鞭の先端が、顎を捉える。
上向かされた先、覗き込む眼を睨み付ければ、見惚れるくらい綺麗な笑みを向けられ、悔しいが息を呑む。
「どうやらあたしはお前に惚れてるみたたいだ」
嗚呼畜生。
平気でそんな言葉を吐き出すあんたが大嫌いだ。
篠鞭が外れた途端、俯いた頬から流れた滴が、薄暗い蔵の土間を濡らした。