嗚呼囚われる。

その眼が嫌いだ。
その唇が嫌いだ。
その声が嫌いだ。
その指が嫌いだ。
その掌が嫌いだ。

いつも見透かすような眼差しで。
いつも憎たらしい笑みを浮かべて。
いつも甘ったるい声で紡いで。
いつも余裕ぶった動きをして。
いつも冷たいくせに、其れはどこか優しい。

「仁吉さんなんか嫌いだよ」

そんなあんたに、翻弄されてる自分が一等、大嫌いだ。

「あたしは愛しいよ」

ほらまた、簡単にそんな言葉吐き出して。
赤い顔のあたしは、さぞかし面白いだろうさ。

「大嫌いだよ」

もう一度、自分に言い聞かせるように呟いた。
だって。

「愛しい」

なんて簡単に言うあんたの言葉も。

「大嫌いだ」

というあたしの言葉も。
どちらも、きっと、本心じゃあ、ないんだもの。