とん。と、背中に預けられた体温。
「佐助…?」
一太郎の為、薬を調合する手を止めて振り返ろうとすれば、ゆるく、頭を肩に擦り寄せてくる。
「どうしたんだい…?」
軽く、苦笑して。
後ろ手で腕を叩けば、ぽつり、零される。
「…疲れた…」
「お前の分も煎じてやろうか?」
「いらない」
心配に眉根を寄せて問い掛ければ、間髪入れず返され、仁吉は声を立てて笑う。
「…苦手なんだよ…」
「若だんなにはその薬を飲めと迫るくせに」
「…………」
それを言われると弱いのか、背中の気配が黙り込む。
その様にまた、笑みが零れた。
「本当に大丈夫なのかい?」
真面目な声音で訪ねれば、こくんと一つ、肩で頷かれる。
「…ちょっとだけ、貸してくれたらそれでいい」
「…ゆっくりおやすみ」
再び、薬の調合を始めながら。
投げ掛ける声は、ひどく優しい。
一度、まるで甘える様に、仁吉の肩に頭を擦り寄せた後。
聞こえ始めた穏やかな寝息に、仁吉はそっと愛しげな微笑を、その口元に浮かべた――。